KATZの菜園便り

四季折々徒然草ー晴耕夜読聴暮らし

山本夏彦「世は〆切」突っ込め

f:id:katzenthal:20180411165332j:plain

 突っ込め

 

小津安二郎監督の「大学は出たけれど」は昭和四年の作である。

一度見たいと思いながらまだ見ていない。

なぜ見たいかというと、そこには凍結された昭和四年がぎっしりつまっていると

想像するからである。

私は居ながらにして昭和四年を呼吸できるのである。

 

まことに映画は情報の宝庫である。

昭和四年はカフェーの時代である。

ライオン、タイガー、美人座など大資本のカフェーの時代で、これは昭和六年

ごろ相次いで廃業した。

そのカフェーの女給で容姿と才あるものが独立して店をもって、以後バー乱立

の時代になって戦後に及んだ。

 

昭和四、五年は帝大出の新卒が三割しか就職できなかったころである。

 

 山本夏彦「世は〆切」P61・62 平成八年一月十五日文藝春秋社刊