「池波正太郎の銀座日記〔全〕」より〔バンド・ワゴン1953年〕
The Band Wagon - Fred Astaire and Cyd Charisse
✕月✕日
そしてきょうは、銀座のB劇場で、戦後のアメリカン・ミュージカルの最盛期に
つくられた、アステアとシド・チャリシーの〔バンド・ワゴン〕の再映を観る。
このミュージカルは封切当時、三度も観て唸ったものだが、いま観ても凄い。
このときフレッド・アステアは五十四歳になっていたわけだが、ダンスは熟達
仕切っているばかりでなく、若いチャリシーを相手に踊って少しもたじろがぬ
強靭さを秘めており、巻頭、黒人の靴磨き(ルロイ・ダニエルス)を相手に踊る
タップ・ダンスの妙味は、いまのいまのアメリカン・ミュージカルの芸なしタッ
プの比ではない。
アステアは現在、八十五歳になり、自伝を執筆しながらゴルフをたのしんでいるそうだが、日本びいきのジンジャーも、チャリシーも元気だそうな。
レストラン〔I・M〕へ行き、頬ぺたがおちそうなチキンライスとポトフ(西洋おでん)
を食べる。